『人間力だより』Vol.034

 日本の活性化の基盤作りについて シリーズ第三弾 「プロダクトミックス的事業創出のポイント(1)」

こんにちは、ライブウェア代表の古田です。

ずっと以前の話ですが、天井の電球の球が切れてしまった為交換を依頼しまし た。すると「交換の為の指図をする人」、「天井まで届く梯子を運んで来る人」 、「電球を運んで来る人」そして「電球を取り替える人」、合計四人の人が来 て一個の電球を取り替えて行きました。
昔はこれを「インド的分業」と言って嘲笑しながらも、あらゆる場でこれを笑 えない事が起こっていた訳ですが、今の日本の社会では生産性活動が進み、少 なくともこの様な事は考えられないはずであります。

この事一つをとって見ても、今では生産性による合理化の次元を通り越して電 球その物のLED化により殆んど取り替える機会さえ無くなり、ここに携わる雇 用そのものが無くなってしまったわけであります。
今から五十年前果たしてこ のような事態を予想して対応を考えていたでしょうか。
この様な発展はあらゆ る分野で起こっており、更に勢いを増して進みつつあります。

今までは社会全体がお互いに引きずられながら都度対応出来て来ましたが、こ の対応力が大きく鈍った結果が今日の雇用問題であります。
解決策としてはこ の様な変化を予測し早めはやめに生産性向上は勿論、それにも増す技術力プラ ス事業創出力即ち前回論じたプロダクトミックス的推進で対応していかなけれ ば、各企業の雇用問題は勿論、社会全体の雇用創出は困難であると言えるでし ょう。



<プロダクトミックス的事業創出のポイント 1>
社会的に意味がある大きな視点での理想に沿ったビジョン、課題から出発する こと。そしてそれに叶う自社の経営資産と比較して課題解決方向を検討するこ と。



現在色々な分野に進出し大きなグループとして雇用を確保しているO社の例を 取り上げてお話しして見たいと思います。

当時O社はスイッチなどの部品を製造し色々な分野に納入していました。当時 の日本の各企業は、ぼちぼち量産化に向かいつつあり、そうなれば製造現場で は短時間で数多くの"スイッチング"が必要ととなってきます。
それが何十万回 となるようになれば、多くの納入先から出来るだけの耐久力のある商品の要求 が必須課題として取り上げられます。
所詮スイッチと云う商品は物体同士の接触と切り離しの単純な原理であり、そ れが短時間で数多く繰り返したならば接点がちびて壊れてしまいます。
その為 色々の素材を開発して対応していましたが、将来の世の中の技術革新を考えた 場合今のレベルよりはるかに桁違いに高い物が要求されるはずであり、それに 応える発想が必要となったのです。

「そもそも接点があるからちびてしまうのだ!」

そこで接点が無いスイッチを創る指示を出し、当時漸く応用され出したトラン ジスターを使った「無接点スイッチ」の開発に世界ではじめて成功したのがこ の会社の成功のスタートでありました。


一般的にはこの様な大きな成功の場合、ここにしがみ付き、量の拡大に囚われ てしまいがちですが、O社の経営者はもっと次元の高い思いを描きました。

「確かにこの開発によって量産コストが下がり、安価に人々に色々な商品を  提供出来ると云う貢献が出来る様になったが、この商品はそれだけで良い  のか?」

「世の中には、当人は仕事として一生懸命行なっているが、そこに本当に生  き甲斐を持って働いているだろうかと考えたくなる様な繰り返し仕事が沢  山ある。このような仕事からの開放ができないのか。」


と。即ち

「機械で出来ることは機械に任せ、人間は生き甲斐の持てるより人間らしい  仕事を行うべきであり開発部品をこの様な分野に役立てる事業を進めたい。」


この様な基本方針を打ちたてて事業創出に取りかかり、結果として次のような 事業の成功が行われました。


1)自動券売機及び自販機事業

当時各駅の乗車券や食堂の食券等の販売は人手による、繰り返し作業で行われ ていたわけですが、今では自販機を含め世の中では機械化が当然のこととして 考えられるようになっています。

2)自動改札機事業

改札口を入る際は駅員の人が鋏で切符にパチンと切れ目を入れる、改札口を出 る時は一人一人必ずチックするといった膨大な繰り返し作業を改札担当が来る 日も来る日も行っていました。「こんな仕事を人間が行うことが将来ともあっ てはならない、人間のすることではない」とO社の経営者は常々考えておられ たそうです。

そこで先ず切符を用いた「自動改札機」を開発してデビューさせ、そこから発 展して今のSUICA等を用いる自動改札も含めた乗車システムと移っていったわ けです。

3)金融窓口システム

昔は窓口に女子社員がずらりと並び、預金の預け入れ、引き出し業務を行って いました。その際常に窓口員が一枚一枚お札や貨幣を数え、更に過ちの無いよ うに数え直すと言ったそれこそ「お金数えマシーン化」していたわけです。

「これを何とか自動化して彼女らを解放できないものか」

と開発されたものがキャッシュデスペンサーであります。
今ではATMとして色々な企業が進出して機械・システムが出来、我々は当然の ように常に便利に活用していますが、これもこの企業の無接点スイッチやセン サーを活用した上で「出来ないはずは無い」とのおもいで追求し、出来上がっ たわけであります。

いずれの機械・システムも多くの企業で今では製造され発展してきていますが、 基本特許はこの企業に属し今でも社会に大きな貢献を果たし、尚且つ企業利益 にもなっているわけです。



成功したもの、今利益を上げているものに企業はしがみ付き、量の拡大、面の 展開と発展させることはリスクも少なくやり易い訳ですが、そこから何が出来 るか、それが今後の文明の発展に如何につながるかと言った視点でのプロダク トミックス的事業開発で、私が実際お付き合いを頂いた企業の成功事例を取り 上げてみました。

プロダクトミックスにはこの他、現在の顧客即ち営業資産を発展させるもの、 商品と顧客との組み合わせを発展させるものなど色々な成功のケースはありま す。

今回は自社員及び社会に役立つ為にはどうするか、この思想で、幅の広い次元 での事業創出を目指していただく為の視点として、プロダクトミックスのスタ ート段階で一番重要な事項であり、わかり易い事例を申し上げたつもりです。

特に今プロダクトミックスを考える場合「東北へ進出して雇用を創出するには」 等の次元で考えて見ることも大切ではないでしょうか。



次回は <プロダクトミックス的事業創出のポイント2>

自社の事業創出の芽及びその可能性のパワーの正しい把握の方法とそのポイン トをお伝いしたいと思います。



ライブウェア株式会社
代表取締役
古田貞幸




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