人間力だより Vol.08

 〜『フランクリン自伝』に学ぶ“人間力づくり”〜
こんにちは、ライブウェア代表の古田です。


最近、国技である相撲や、プロボクシング等、スポーツ界にまで“人間力”が 基本であることが改めてではありますが声高に言われています。


私はこのメールマガジンで今までこの“人間力”とは何か、さらにその活かし 方等、もっぱら“人間力”の大切さに重点をおき書き留めてまいりました。

多分皆さんは、

「それは解ったがその“人間力”をどうやってにつくるのかが大切で、その基本は何で、如何にすれば“人間力”が作れるのかを教えてくれ」

と言われると思います。

そこで今回からは暫く“人間力づくり”についてお話することにしたいと思い ます。



巷には『○○時間、△△週間でマスターする、克服する方法』と言った出版物 が良く出ておりますが、この“人間力づくり”に関しては、短時間で又簡単に 出来るものではありません。

“人間力づくり”とは、繰り返し、繰り返し努力することが基本である事を 先に申し上げて置かなければなりません。

そのうえで、今回は我々の先達が、如何にしてこの“人間力づくり”を行って きたかの事例をご紹介する事によってお役に立てて頂きたいと思います。


“人間力づくり”又は道徳的完成への試み、として有名な書籍にアメリカ合衆 国の建国の父とも言われるベンジャミン・フランクリン自伝があります。

この自伝はわが国では明治年間にも盛んに広く読まれ、正岡子規は病床で読ん で感心したという逸話もあるそうです。

私は1957年に岩波文庫から文庫本で廉価で初版出版されたものと出会った のが最初です。 早速真似てみましたが挫折失敗し、その後何回か挑戦して、一見簡単に思える 事ほど実施・定着させることが如何に難しいかを、はじめて身を持って悟った 次第です。

ベンジャミン・フランクリンが英国から移民した一介の印刷工から、合衆国独 立の中心人物と成るまでが自伝では記されておりますが、なんと言っても彼の 若いときの“人間力づくり”が具体的に書かれている部分が圧巻であり、今で も世界中で参考にされております。



以下、フランクリン自伝からの引用を交えて少しご紹介したいと思います。

ベンジャミン・フランクリンは、いかなる時にも過ちを犯さずに生活し、常日 頃の習慣や性癖や、交友のために陥りがちな過ちは全て克服してしまいたいと 思った。

常に自分は何が悪で何が善であるかは分かっているので、常に善をなし、悪を 避けることが出来ないわけはないと考えていたが、ある過ちを犯かさない事を 用心していると思いもよらず他の過ちを犯したり、うっかりすると習慣がつけ 込んできたり、性癖の方が強く理性では抑える事が出来ないこともちょくちょ くある始末で、これは思ったよりずっと困難な事であることが先ず分かった。
つまり、このような道徳の確立、即ち“人間力づくり”をする事は、同時に自 分の利益になると言うような、単に理論上の信念だけでは過失を防ぐことは到 底出来ない。

そこで確実に、不変に、常に正道を踏んで自信を得るためには如何にするかを フランクリンは考えたわけです。そのためには、悪い習慣を打破し、良い習慣をしっかり身につける方法を明確 にして繰り返し繰り返し確実に行う以外無い事が分かった。

悪い習慣、良い徳目は集めれば数限りなく沢山ある、これをどう集約し、集約 した各項目の優先順位付けを如何にするかも成功の鍵であることも彼は理解し た。

そこで、彼は今までの試行錯誤の繰り返しの結果から次の様に徳目の集約と、 実施のための優先順位付けを行った。


★ベンジャミン・フランクリンの「十三徳樹立」

 第一 「節制」…眠くなる程喰うな、浮かれる程飲むな
 第二 「沈黙」…自他に益なきことを語るな、駄弁を弄するなかれ
 第三 「規律」…物はすべて所を定めて置くべし、仕事はすべて時を定めてなすべし
 第四 「決断」…なすべきことをなさんと決心すべし、決心したことは必ず実行すへし
 第五 「節約」…自他に益なきことに金銭を費やすな。即ち、浪費するな。
 第六 「勤勉」…時間を空費するな、常に何かの益有ることに従え。無用の行いは全て断つべし
 第七 「誠実」…偽りを用いて人を害するな。心事は無邪気に公正に保つべし
 第八 「正義」…他人の利益を傷つけ、あるいは与えるべきを与えずして人に損害をおよぼすべからず
 第九 「中庸」…極端を避けるべし。例え不法を受け憤りに値すると思うとも、激怒を慎むべし
 第十 「清潔」…身体、衣服、住居に不潔を黙認するな
 第十一「平静」…小事、日常茶飯事、又は避けがたい出来事に平静を失うな
 第十二「純潔」…性交は専ら健康ないし子孫のために行い、これに耽りて頭脳を鈍らせ身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるな
 第十三「謙譲」…イエス及びソクラテスに見習え


彼は上の十三の徳目を全て習慣化し定着させようと思ったので、同時に全部を 狙って注意を散漫化させるような事はしないで、一定期間どれか一つに集中化 させ確実に習得させる事にした。

その集中させたものが習得できたら、その時はじめて次の徳目に移り、こうし て十三の徳目を次々に身につけて行く方法を取ることが確実であると考えたわ けです。

先ず第一の徳目からはじめ一週間をかけて集中化し、とにかく自分が納得する レベルまで習慣化させることにした。そのための毎日の結果をチェックできる チェックシートを作成して行うことにした。

チェックシートは縦軸に十三の徳目、横軸に曜日が入ったものを作り、毎週こ の一枚のシートでチェックできる様にした。

即ち彼は成功させる為には、勿論繰り返し、繰り返しの実施の連続であるが、 成功の大事な基本ポイントとして三つ取り上げている。


1.
先ずこれさえクリアー出来れば“人間力”として満足できるはずである。と言う徳目の絞り込みと自分なりの定義の明確化である。

2.
徳目の整理が出来たならば、その徳目の実施順位の決定である。例えば彼が「節制」を一番初めに取り上げたのは、古くからの習慣や誘引や不断の誘惑の力に常に警戒を怠らず、用心をしつづける為には、頭脳の 冷静と明晰が必要であるが、先ずそれを得る為にはこの徳が必須条件であると考えた。
これが出来たならば次の「沈黙」の徳はもっと身につけやすくなるだろう等、この様に次々と熟慮しながら彼は十三項目全てに順位付けを行った。

3.
各徳目を確実に実施・定着させる為には、徹底したチェックを行うことである。


フランクリンはヒントとして『ピタゴラスの金言集』から学んだと記している。

ピタゴラスは門弟に対して、道徳律を課して毎日朝と晩に自己の良心をチェッ クする様に命じたと言われている。


実施・定着と良く使われる言葉であるが、定着の定義とは…

 『瞬間風速的実施ではなく確実に長期的に実施され、更にレベルアップ出来る力が備わること』

であり正にフランクリンはこの実施・定着の繰り返しを行ったわけである。


数多くの企業で活動として行われている5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾) 活動などは一つの“人間力づくり”であり、何から行うかの優先順位づけ及び 徹底した定着までのチェックの繰り返しにより、最終的に躾となって一人一人 の人間力が出来、さらにそれが企業体質となって定着する一つの例であると思 います。


今回は偉大なるフランクリンの“人間力づくり”の例をご紹介しましたが、 色々な徳目に対する強弱は人によってそれぞれ違いがあります。
という事は各自、自分なりの必要な徳目を探し出しその強弱を先ず理解した上 で、フランクリンの様にきちんと基本ポイントを押さえて、途中で挫折しない “人間力づくり”を計画する必要があると思います。


参考文献:『フランクリン自伝』(松本慎一・西川正身訳 岩波文庫)





ライブウェア株式会社
代表取締役
古田貞幸

人間力を可視化する
【トライアングル・アセスメント】


最適な「場と教育」を提供する
【MPIシステム】


何を学ぶべきかナビゲートする
【ラーニング・ナビゲーション】


組織の活性化を推進する
【組織活性化力診断オークス】