人間力だより Vol.10

 〜オムロン創業者立石一真氏の人づくり〜
こんにちは、ライブウェア代表の古田です。


今回は社員の人間力育成に力を注がれた、ある創業経営者のお話をします。


「人」による単純繰り返し作業からの、人間の開放の始祖的存在であるオムロ ン株式会社の創業者立石一真氏は、こう述べておられます。

 「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での生活を楽しむべきである」

これを企業理念として、実際、繰り返し作業ロボットの基礎となる「無接点ス イッチ」の開発から、我々が日常使用している「自動改札機」「自動券売機」 さらには銀行の「現金自動預け払い機」など次々に人間による同じ事の繰り返 し作業からの機械化移行を実現する開発を行なっています。

このことは、長い目で見た人的生産性の向上は勿論、人類のより創造的分野へ のシフトという面においても、立石氏がトリガー的役割を担った経営者である ということを示していると思います。


また氏は、経営するオムロン株式会社(当時は立石電機株式会社)の規模が大 きくなるに従って出てきた、「業績は悪くないのだが、情報が正しく伝わらな い」「レスポンスが遅い」「在庫が膨らんでいる」などの問題について、「何 かおかしい」と色々調べた結果、「これは結局会社が大きくなった為の病であ る」とお考えになり、氏はこれを『大企業病』と名付けられました。

以後日本の大企業の中では同じような悩みが多く、氏の名付けた『大企業病』 と言う言葉は今や経済界の一般通用語化しております。


〜 立石一真氏との出会い 〜

1981年のことになりますが、当時私は家電、通信、自動車、機械、化学そ の他、モノ作りを行っている各業界の代表社と共に、当時一番遅れていると言 われた資材・購買機能の研究会を日本能率協会で行いました。
来るべきグローバル化による覇権争いを目前に、日本企業にとって資材・購買 機能の強化が早急に必要でした。

先ず日本における資材・購買機能の実態調査や、進んでいると言われた欧米各 社の視察、世界資材・購買大会への出席等を行い、報告書の出版、セミナーや 講演、さらに当時の経済関連誌等への寄稿も幾つか行いました。


その中で私は、日本における資材・購買機能の四つのレベルを設定しました。

 ≪資材・購買機能の四つのレベル≫

 【4】手配購買レベル
    …設計や他の機能から言われた通りに手配しているだけの購買
 【3】合見積り購買レベル
    …何社かを正しく比較して購買する
 【2】査定購買レベル
    …物の価値を正しく査定して購買する
 【1】技術購買、開発購買レベル
    …物を買うのではなく相手の技術・知識レベルの段階から買う購買

そして、ほとんどがレベル【4】であった日本のメーカーの実態から、如何に 日本の資材・購買機能が遅れているかがわかります。そして、如何にスピーディ に最高のレベルまでもって行けるかが、モノ作り日本の大きな課題である事を 発表しました。


こうして私が寄稿したいずれかの雑誌をご覧になり、立石一真氏から「是非私 に会って話したい。ついては時間を取って欲しい」との依頼が私のもとに届き ましたが、すでに大経営者として名高かった氏が京都から出てこられるのは恐 れ多い事です。早速、私から当時京都の御室にあった立石電機の本社に出向き、 初めて氏とお会いしたのが1982年のことでした。

これが以後私がコンサルタントとしてお付き合いさせて頂きながら、逆に氏か ら数多くの経営思想及び人づくりの面などで教えを賜ったスタートでした。 正に私にとっては一期一会の大切さを今もなお噛みしめさせる、そんな氏との 出会いでした。

〜立石一真氏の人づくり〜

立石一真氏が人づくりに関して行われた事は沢山ありますが、今回はその中の 幾つかを氏の著書である「立石一真の経営革新塾」(ダイヤモンド社)からの 抜粋・引用を含めてご紹介することにします。


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1.「企業の成長が鈍る原因の一つに、社員の士気の低下がある」
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「もしこの様な症状が出ていたならば、モラルダウンして社員のパワーは半分 以下しか出ていないと考えるべきである。

士気が落ちているということは、社員一人一人に働きがいがないことであり、 社員の大切な人生を預かっている企業としては責任を感ずる必要がある。

また、士気が低下するというのは、成長が鈍ってくると士気が低下し、士気が 低下すると成長が鈍るという、悪循環に陥るため要注意である。
しからば如何にすれば良いか…、社員一人一人に『夢』を持たせよ.


私たち人間は、皆夢を描く楽しみを持ち、それを実現したときに生き甲斐を感 じる。企業で働く人に夢を持たせることは、働く人の生活に責任を持つがごと くに経営者の責任であると考えるべきである。

企業には経営機構と社会機構があるが、そこで働く人たちには、企業人として 経営機構に属し、人間として社会機構に属しているのであるから、企業人とし ての夢と人間としての夢を共に持てるようにすべきである。」


「企業に入ってからも学校と同じ様に学ばなければならない、即ち企業も学校 だからである。ただ学校と違うのは、学校ではどんなに勉強しても点数という 物差しではかれる学問をしたにすぎなく、それを活用して仕事をする機会は与 えられない。

しかし、仕事の場である企業では勉強さえすれば、学問でも技術でもすぐ仕事 に活かすことが出来、目に見えて成績に現れすこぶる張り合いが出る。 すなわち、学校では机上の学問であるが、企業では実際の仕事をしながら上司、 先輩がOJTで教育訓練にあたることが出来る。

学校では期末試験で成績を採点するが、企業では毎日の仕事や活動を見ながら 科学的な方法で評価し、それを採点する。行動を含めた人間力、技術力、企業 に対する忠実度等多方面から評価し、有能な人を探して登用し『適材適所』に 配置し、企業を伸ばすために役立てる。

即ちこの評価は、言い換えれば会社が大車輪でやっている『教育訓練』の効果 をはかるために欠くことの出来ない物差しである。」

<考察>
⇒結局社員の育成はその人に今必要な事に対する「学ぶ環境と機会」を与え、 その育成度合いを正しく評価し、それに見合った「働く場」を与え実戦で育て る事が大切だということだと思います。
わが社ライブウェア社のサービスでも、【トライアングル・アセスメント】に よる人間力の把握と評価、【ラーニング・ナビゲーション・システム】による 育成、【MPI】による適材適所の配置と言った一連の仕組み作りの思想を氏 から学ばせて頂きました。


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2.「チャレンジすること、そのためには挑戦する風土作りが大切」
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「まずやってみることが大切である。ただ無茶苦茶にやるのではなく、七分ど うり出来ると判断したならば勇気を出して行い、あとの三分は必ず救済策を考 えておく事を忘れてはならない。」

「何かに挑戦し、そのバリアを突破したときは必ずそれなりに評価してやるこ とが大切である。

稽古事では、まず褒めることが大切であり、その褒め方は要領よく誉めなけれ ばならないと言う。五つ教えて三つ誉めて、二つ叱る。これが稽古をつける要 領であり、企業の場合の人づくりも同じである。

実際、挑戦して何かをなし遂げたならば必ず誉めるようにすれば、また挑戦す る意欲が沸いてくるはずである。」


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3.「スピードが大切、そのためには早く正しくする風土作り」
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「スピード第一と言うが、少々まずくとも早くと言うのではない。あくまでも 『品質』は第一である。そのため、スピードとは『巧速』と言うことばであり、 つまり『早く正しく』である。

「打てば響くような気持ちのよい仕事をすることであり、そのため万事意思の 伝達がスタートとなる。」

「仕事の能率を高めるためには、人間の意思の伝達効率を向上することに始ま る。これは『早く正しく』命令を出し、『早く正しく』報告して、『早く正し く』必要機能に先に協調連絡する。その命令、連絡を受けた者は『早く正しく』 行動を起こし、その結果報告を『早く正しく』検討する。
このたゆまざる実行によって『早く正しく』物事を処理する癖が自然とつく。」


<考察>
⇒過去のメルマガの私のコラムでもお伝えした、日本企業の強みである 『機能責任』体制の基礎作りの部分であり非常に重要な事だと思います。

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4.「真の人間形成とは」
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「我々は何のために働くのか?オムロン社では社憲として以下の事を明示している。

 『われわれの働きで
  われわれの生活を向上し
  よりよい社会をつくりましょう』

とは言っても、理屈の上では分かっていても、真実、心の底から『そうだ』 と合点するまでは時間がかかる。一生合点がいかないまま終わってしまうかも 知れない。
この、合点がいくか否かは、人間形成の問題であるから、人間さえ出来たなら たちどころに合点でき、実践できるはずである。
それによって人生の意義もわかり、幸福の基盤もできて、これからの長い人生 を、幸福に過ごす事が出来る転機になる。」

「昔の話であるが、城作りの現場で働いている石工に『おまえは何のために働 いているのだ?』と聞いたら『私はおまんまの為に働いているのだ』と第一の 答えが出た。もう一人に聞いたら『石垣の石を作っているのだ』と第二の答え が出た。もう一人の石工に聞いたら、すっと立ち上がり、胸をはって『おれは あそこに建つ大きな城を作っているのだ』と第三の答えが出たと言う。

この三つの答えの違いは人生観の違いであり、願わくば皆がこの第三の意識を 持って働いて貰いたいものである。」


<考察>
⇒この辺のことは正に『人間力づくり』そのものであり、わがライブウェア社 は、世の中の働く人々全員が常にこの様な意識で仕事ができる様になることを 支援する為の仕組み作りに努力しております。



ライブウェア株式会社
代表取締役
古田貞幸

人間力を可視化する
【トライアングル・アセスメント】


最適な「場と教育」を提供する
【MPIシステム】


何を学ぶべきかナビゲートする
【ラーニング・ナビゲーション】


組織の活性化を推進する
【組織活性化力診断オークス】