人間力だより Vol.12

 〜人間力を高めるためには「良い本」と付き合うこと〜
こんにちは、ライブウェア代表の古田です。


京セラの事実上の創業者で、現在は名誉会長をされながら日本の若手経営者に 対して、経営哲学を説かれておられる稲盛和夫氏は


「自分を高めるためには、ぜひ良い本の読書をしなさい。勿論実践の中で勝ち 得たものは一番重要だが、自分が経験し得ない事を整理するのが読書である。 この実践と読書が人間の精神の骨格を作る」


と言われています。

氏は仕事でどんなに遅く帰っても、お酒を飲んで帰っても、主に哲学書とか中 国の古典を常に枕元に置いておき、必ず読まれるといった、それこそご自身が 「良い本」の読書家であり、これが今日の氏の成功の精神的基礎作りとなって いる様です。



さて、前回のコラムで儒教の精神のことに触れましたが、今回は稲盛氏も多分 「良い本」の中に取り上げておられると思う中国の古典、即ち儒教の基礎となっ ている『論語』に触れてみたいと思います。

『論語』は今から約二千五百年前に中国の思想家の孔子と、そのお弟子さん達 との日常のやりとりを後に纏められたものであり、読む人それぞれの人間に見 合った解釈の仕方をしながら学ぶことのできるものではないかと思います。
したがって読む人の精神的基礎作りの成長度合いによって、少しづつ学ぶ内容 レベルが違っており、何回でもそれこそ一生繰り返して読んでも学ぶことが出 来る。これこそ真の「良い本」ではないかと思います。


孔子は『仁』『知』『勇』といい、この一つひとつに対しても改革者、行動者 として常に現実に立ち向かっている人であった様です。

人は一人ひとりそれぞれ常に違う。
したがってその人、その時に一番適した答えが必要であると言います。 例えば、孔子は弟子に「人を愛することが『仁』だ」他の弟子には「おのれの 欲しないことは人に施さないことが『仁』だ」また他の一人には「おのれに克っ て礼にかえることだ」と教えました。

即ち『仁』とは一人ひとりの特性を最大限に拡大すること、その人間に見合っ た最も人間らしい生き方をすることと考えてよいということではないかと思い ます。

『知』とは人間として行うべきことと、超人間的な神の世界とは距離を保つこ と、この区別する働きが『知』であると言っています。


また孔子は『仁』『知』『勇』など人間性に関わる内面の徳を身につけるため に、学問の重要性を強調しています。これが稲盛氏が言われる実践と読書であ ると思います。

さらに孔子は「知識や学問が生きるのも死ぬのも、それを所有している人間次 第であり、人間は知識や学問に使われるのではなく、あくまでも主人公なので ある」とも言います。


論語の内容を通じて一貫しているのは、人が人として誠実に生きるということ、 つまり人間尊重、人間優位の立場である。

論語の中で一番最初に取り上げられているのが「学而」であり、学而自体は合 計十六項目から成り立っていますが、皆さんに一番馴染みの深いのが次に掲げ る第一項目でしょう


<原文>

  「子曰。学而時習之。不亦説乎。
   有朋自遠方来。不亦楽乎。
   人不知而不慍。不亦君子乎。」


<読み下し>

  「子曰わく、学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
   朋(とも)あり遠方より来る。また楽しからずや。
   人知らずして慍(うら)みず。また君子ならずや。」


<通釈>

   孔子が云う「学問をすること、そして実戦を通して学問を身につけてい
   くこと、これは無情の喜びだ。そうすることにより、次第に同志ができ、
   見ず知らずのその同志達が集まってくる。こんな楽しい事はない。
   人に認められようが認められまいが、そんなことは気にかけずに勉強を
   つづける。これがほんとの君子である。」


もう少し具体的に解説してみますと、

「学んだことを繰り返し、繰り返し実践することにより、自然にそのことが習 慣化して真に身についてくる。これは何とも喜ばしいことであり、習慣は第二 の天性とも言われるからである。
この様なプロセスを踏むことを身につけていれば志、思いを同じくする者が自 然とはるばる遠方から訪ねてきて、忽ち意気投合して語り合い友達になること が出来る。これは本当に楽しいことである。
世の中から認められようが、認められまいがそんなことは一向に気にせず研鑽 に励む。これはなんとも立派なことではないか。」


ここで、思いを同じくする、志を同じくする者同士が集まって友となった例を ひとつご紹介したいと思います。
ハイゼンベルク、ボアー、ワイツエッカー、パウリ等違った分野の科学者同士 が毎年スイスの山小屋に集まって、それぞれ分野は違っても酒を酌み交わしな がら、人間力に関する「思い」を語り合って友となり、その後それぞれの分野 で殆ど全員がノーベル賞を受賞したという逸話があります。



毎回繰り返して述べていることですが、知識、技術等が真に活かされるのは 『人間力』の土台が大切です。
そのための一つとして今回は「良い本」と付き合い『人間力』を身につけるこ とにより、「良い友」が得られ、楽しい人生を送ることが出来るということを ご紹介しました。

また折りに触れ取り上げたいと思いますが、私の出身地の会津の藩校「日新館」 の流れを汲む戦前の会津中学校、現在の会津高等学校では、生徒会の名前を 「学而会」と名称し、学校の授業以外のクラブ活動あるいは人との付き合いの 中で、まず「人間力」を身につける大切さを説き、学而会歌まであります。




ライブウェア株式会社
代表取締役
古田貞幸

人間力を可視化する
【トライアングル・アセスメント】


最適な「場と教育」を提供する
【MPIシステム】


何を学ぶべきかナビゲートする
【ラーニング・ナビゲーション】


組織の活性化を推進する
【組織活性化力診断オークス】