人間力だより Vol.30

 日本の活性化の基盤作りについて   シリーズ第二弾:
      「国の活性化の基礎は雇用にあり! 雇用作りには高い理念と工夫が必要」〜

こんにちは、ライブウェア代表の古田です。


今政府は「第三の開国」とか「国力の活性化」とか色々打ち出していますが、 いずれも具体性に乏しいものばかりで、特に国力の活性化に至っては国民に見 える形の具体的なものは何一つ出されていません。

国力の活性化に不可欠な要素の第一は、「国民の多くの人が喜んで働ける場を 常に得る事が出来ること」で、即ち「失業率の大幅低下を如何に行うか」であ ります。

現在の政府はこの課題に触れると常に出る言葉は「介護福祉」と「保育関連」 だけであり、これらは今後かなりのノウハウの確立と最終的には民間の力が必 要で、現在の形でただ拡大を考えた場合は全て国の予算の裏づけが無ければ難 しいものばかりです。
さりとて以前の様な「公共事業」を出動する事も、もはや出来ません。
この分野の中小土木建設業は大幅な公共事業の削減により、業界の30%以上が 倒産や廃業に追い込まれ雇用を大きく減らしているのが実態であります。
したがってこの「雇用問題」に対しては政治に大きな期待は持てないでしょう。

一方、経済界への期待を眺めて見れば上場企業にお金が約200兆円以上あり、 使いみちの無いままになっています。
これでは国内の雇用を生む方向に向かっているとは言いがたい状態です。
それなら今抱えている社員の給料を上げてやれば多少活性化に繋がるはずです。
しかし、各社今後の事業の先行きを考えると活性化のためとはいえ行う自信も 無く、さりとて国内で新しい事業の展開や現在の事業の拡大を考えて海外展開 と天秤にかけると、どうしても国内での大きな設備投資は出来ないのが現状な のです。
「技術の革新による国内雇用がどれだけ期待出来るか」は重要なテーマではあ ります。

しかし、日本の産業で今一番大きな分野である自動車関連、家電関連をはじめ としたその他多くの「物作り企業」等を考えた場合、安定拡大が進めば結局コ スト競争力面から海外移転となり、国内雇用の起爆材には大きな期待は持てま せん。
従って今の状態では、IT関連など一部の分野を除いた現在多数の産業界からの 大幅な雇用の拡大はあまり期待出来ないといえるでしょう。

「全体の景気は上向き加減だ。」と言いながら以上の様な構造的な問題から国 内の雇用を生み出す力が上昇にスライドし、良くなってくる気配も起っていま せん。
この様な訳で今の日本は農業・林業をはじめとした一次産業の活性化もふくめ て、結局過去多くの面で技術資産や各種ノウハウを多く保持し人材も豊富な二 次・三次産業界に頼るしかない訳です。


そこでこの産業界の活性化を如何に展開すべきかをテーマに取り上げてみたい とおもいます。



企業の発展には本業が需要拡大に伴って規模も雇用も増大して行く場合の他に、 企業の戦略として「自己増殖」し新しい事業なり新しい起業を興し、拡大して 行く場合があります。

しかしこの場合も単に現在企業内に存在する機能を分割して一見新しい事業の 展開を行い拡大しているかに見えますが、実は外部委託業務等の「内製化的発 展」に終っている所も多いのです。

基本的には前者のような自己増殖型は一般的に言われている「ブロダクトミッ クス的拡大」であり、後者は「ブロセスミックス的拡大」と解釈して良いと思 います。

これを国内全体の雇用面から見れば前者の「ブロダクトミックス」は新しい事 業による真の雇用創出に貢献しうる期待は大でありますが、後者の「ブロセス ミックス」は確かに各企業個々で見れば一見拡大している様ですが、他の領域 への侵食であり国全体の雇用創出面からの貢献度は小さいと言わざるを得ませ ん。

即ち「プロセスミックス」の場合の多くは、他に出している付加価値を内部に 取り込むためか、又は余剰人員対策、或いは「隣の芝生は青々だから」といっ た動機が不純な場合が多いのです。

こうした事業展開は基本的には官僚の「天下りの為の特殊法人作り」に類似し ており、消極的な拡大展開で、最終的にはあまり成功しているケースは少ない のです。

これに対して雇用創出面から見れば「プロダクトミックス」は「積極的拡大展 開」と言っておきたいと思います。



日本の経済が最も活性化した時代を築いた一番の成功の要因は何だったのでし ょうか。

それは大企業から中小企業までこぞって各経営者が社員と一丸となって、色々 な形での「プロダクトミックス」に取り組んだ事です。しかし、その際は必ず 「何々馬鹿」と言われる様な、それに賭けて徹底して取り組む人材が必ずおり、 常にその人達が中心となって成功を導き出して行った事は見逃す事は出来ませ ん。

「プロダクトミックス」の色々な形とは、開発技術、製品技術、生産技術等各 種自社有利な技術を生かした商品開発を含めた事業の他への展開、自社のマー ケティングを生かした展開など色々あり、その時点で持っている生かせる経営 資産を基に展開していったわけです。

しかし、成功の一番肝腎な秘訣は持っている資産の大小よりも、その展開と企 業体質との合致度合いやそれに賭けて「何々馬鹿」に成れる人材の有無であり、 その人材を中心にし事業を徹底して任せ切り、任せた側も余り口出しもしない。 代わりに決して甘やかしの援助もしない。この様な所にある様です。

経済成長が停滞しかかった時、特に大企業の何社かは先に掲げた動機が不純な 官僚の天下先作り的拡大策を取ったのですが、そうした先へ活性化のコンサル ティングの依頼がいくつかの企業からありお付き合いした事が有りました。

それらは、殆どの幹部が親企業からの天下りで社内では「落下傘部隊」と呼ば れ活性化どころか生産性はすこぶる低く、やがてはその業界では成り立たない ことが明らかで、結局は親企業が次々に手放して行かざるを得なかった事もあ りました。

しかし、私は「プロセスミックス」を全て否定しているわけではありません。
私が同じく過去コンサルテング活動に参加した企業のなかには、部品メーカー から簡単なサブアッシー事業に進出し、それを全て身体障害者が出来る設備・ 工具等の工夫により身体障害者のみの工場を幾つか作り雇用を創り出した素晴 しい事例も見てきました。

雇用された障害者の社員が、給与明細から税金が天引きされていることを見て 「我々も社会の為になる事が出来る」と、それが一番の喜びであったそうです。
この様に目的を持って雇用を創出するということは、それなりの高い理念とそ れなりの覚悟が必要なのです。

この事例などは雇用、人作りを経営の大目的に常にしておられた経営者の思想 であり理念の結果で、先に取り上げた動機が不純な「プロセスミックス」とは 大きく区分すべきと思います。

また世の中には無い技術を引き下げて、部品作り、組み立て、販売さらに新し い技術・ノウハウ・M&A等による機能創出によってプロセスへの進出で新事 業、新企業に進出し、関連事業創出で雇用を拡大している例も少なくありませ ん。

この様な展開の場合は一見「プロセスミックス」の様でありますが、成功させ るためには先に取り上げた人材資産をはじめとする、色々な自社資産の活用が 当然必要であり「プロダクトミックス」に分類する方が無難でしょう。

日本の企業は大から小迄一度純粋な「プロダクトミックス」を考えて見るべき ではないでしょうか。
特に、土木建築業界の撤退で今地方の雇用が大きな問題となってますが、地方 の企業こそこの課題に真剣に取組む必要があります。
農業、林業、漁業と言った一次産業と流通業である三次産業が主力の地方の中 で、モノづくりで世界的な優位性を打ち立ててきた自信で、今後二次産業の 「プロダクトミックス」をどう展開すべきかを考えた場合、面的な余裕の大き い地方の企業こそそのチャンスであると考えるべきと思います。

「プロダクトミックス」の成功の基本は、先ず第一は企業体質との合致度合い、 成功に導くための人材の有無即ち「人材資産」の存在などであります。


次に大切なことは計画即ち戦略の正しさであり、その正しさとは世に受け入れ られる必然性です。

それと対応する自社に存在する各種「経営資産」との合致、仕組み作りや運用 レベルの高さ度合いの濃淡等を考えて行かなければなりません。 しかし、今日本の多くの企業を見た場合、目先のことに目を奪われこの基本と なる「経営資産」の把握さえ自信を持って出来ていると言える企業が少ないの は残念です。
「経営資産」と言えば一般的に固定資産勘定のものを想定しがちでありますが、 「プロダクトミックス」展開に必要な経営資産の把握とは、冒頭に掲げた様な 企業体質や人材資産をはじめとした「無形資産」の事なのです。

従って、この展開のスタートは正しくは「経営体質」、「経営資産」や「自社 の仕組み」や「運用レベル」等の具体的把握からスタートしなければならない わけです。



今回は日本の活性化、そのための雇用の増大、その手段としての「プロダクト ミックス」の展開を進める事の大切さを記しました。 次回からはそれを成功させる為の社内の各種経営資産の把握の方法及び経営戦 略の立案と資産の結び付け、成功に導くための具体的展開方法、運用方法等に ついてのポイントとなることを記したい思います。




ライブウェア株式会社
代表取締役
古田貞幸



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